2019年9月2日(月)から5日(木)にかけて、集中講義形式で総合資料学の授業を実施しました。この授業は、大学院生向けに開講されているもので、総合資料学の基本を座学で学んだのち、プロジェクト・ベースド・ラーニング形式で、仮想の展示を作り上げつつ、総合資料学に対する理解を深めるというものです。
今年度は、複数の大学院生の同時受講の形式をとることで、異分野融合というだけではなく、多様な視点を得つつ学生たちに学んでもらうということを目指しました。具体的には、長崎大学・総合研究大学院大学・神奈川大学・千葉大学の大学院生に加え、ベルギー・ルーヴェン大学の学生3名も加える形で、総勢19名による授業を行いました。
前半は、総合資料学の総論ののち、歴史資料の概要と理解、自然科学の手法を用いた歴史資料研究、情報学による応用などの事例について学んだのち、歴博の実際の展示を見学しつつ博物館の展示手法と研究の関係についての授業を行いました。後半では「起源」という言葉をキーに、1チーム3名ないし4名ごとに別れて、歴博での簡易的な展示を行う仕組みとして作成した「モバイルミュージアム」を用い、模擬展示を行ってもらいました。このモバイルミュージアムを応用することで、資料をどのような角度で見せるかを、学生たち自身で考え、提示する方法を研究することができると考えています。
最終的な成果としては、鑑賞のための植物の応用の起源と歴史、映画の起源、いわゆる「和食」とはいつからかなのか、起源をめぐる地域ごとの競争など、様々な視点が提供され、それにまつわる資料の画像等を使った展示が構成されました。複数の大学の学生を一つのチームとしたことにより、より多様な視点によって学生たちが考える機会を提供できたと考えています。最終的には素晴らしい成果を出すことができており、それぞれの大学院生たちには敬意を表したいと思います。
また、長崎大学では、前年度に引き続き、これらの展示成果の一部を運搬し、同大学附属図書館に展示、あわせて学生たちにギャラリートークをしてもらうという試みも合わせて行われました。歴博からは後藤もギャラリートークの現場に立ち会いましたが、他の学生や研究者以外に歴史資料や歴史文化の面白さを伝えるという点で、非常に良い試みとなっています。
本授業形式は、2020年度以降も継続して行う予定です。