2018年度の総合資料学プロジェクトについて

すこし遅くなってしまいましたが、2018年度のメタ資料学研究センターの活動概要についておしらせします。

2018年度も、引き続き教授2名(林部センター長・三上)、准教授3名(小倉・内田・後藤)、助教1名(橋本)、特任准教授1名(天野)、特任助教1名(渋谷)の計8名体制にて活動を行いました。

何より、2018年度は5月からシステムの公開を開始したことが、特筆すべき事業です。この情報基盤システムはkhirin (knowledgebase of historical resources in institutes)と名付けられ、5月に当館の館蔵資料歴史民俗調査カード聆涛閣集古帖のデータを公開しました。その後、9月には千葉大学附属図書館・町野家文書を千葉大学附属図書館と連携して、翌年3月には鳴門教育大学附属図書館後藤家文書と、館蔵錦絵データベースの公開へと結びつけることができました。今後もさらにデータの量を増やし、広く情報基盤として連携できるように進めてまいります。

大学との連携事業は、新規に歴博として協定を結んだルーヴェンカトリック大学熊本大学福島大学山口大学をはじめ、計12大学とともに組織的な研究を進めています。それぞれの大学ともに歴史資料情報の共有化や地域連携、授業などの共同実施を行い、総合資料学の推進をはかっています。

とりわけ、2月にはルーヴェンカトリック大学(KU)との協定とワークショップの実施、3月には山形大学にて全体集会を実施するとともに、特に大学と連携して行う「奨励研究」の発表を多数いただきました。これにより、総合資料学の多様な研究を俯瞰するとともに、今後の新たな研究の芽を見ることができました。山形大学での開催を大変にありがたく思います。

2018年度は、複数の書籍出版も行いました。一つは、ミシガン大学出版の仕組みであるFULCRUMを活用したものです。こちらでは文理融合の様々な論考を日英両言語で掲載することができました。また、文学通信様より、『歴史情報学の教科書』を上梓いたしました。こちらも、当初は電子出版として作成し、無料で、かつオープンデータ(CC BY-SA)として公開をいたしました。2018年度ではありませんが、翌4月には紙媒体での出版も行い、多くの皆様からご好評をいただいております。文学通信のみなさま、執筆いただいた皆様に御礼を申し上げます。

これ以外にも、2018年6月には日本アートドキュメンテーション学会との共催による国際研究集会を実施し、Getty 研究所と台湾中央研究院の方をお招きし、国際的な標準語彙の可能性を検討しました。12月には情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会のシンポジウムとの共催で、「歴史研究と人文研究のためのデータを学ぶ」というチュートリアルを実施するなどのイベントを行うとともに、10回の共同研究会を実施しました。

全6年間のプロジェクトも折り返しとなり、4年目を迎えました。今後はますます学としての構築を重要視するとともに、大学共同利用機関として、より共同利用性を高めるべく様々な活動を進めてまいります。

(文責・メタ資料学研究センター・副センター長・後藤真)