2019年10月10日(木)、異分野連携ユニット令和元年度第1回研究会を開催しました。異分野連携、特に文系と理系という大きく異なる分野間の連携研究は、これまでにない新しい知見を生み出す可能性を大いに秘めており、総合資料学事業では積極的に推進しています。
今回の研究会では、名古屋大学宇宙地球環境研究所の三宅芙沙准教授をゲストスピーカーとして招き、専門である太陽物理学に関する最先端の成果について発表してもらいました。三宅氏は屋久杉の年輪から「西暦775年の宇宙線飛来(Miyake et al. 2012, Nature)」を発見した太陽物理学者であり、太陽以外の恒星で観測されてきた「スーパーフレア」が、太陽でも発生しうる可能性を世界で初めて示されました。今回は、太陽フレアと樹木年輪の炭素14濃度の関係について詳しく解説してもらい、過去1万年間におよぶ、太陽フレアのクロノロジーの構築に向けて、樹木年輪などの分析をどのように進めているかを紹介してもらいました。太陽フレアの発生によって、地球上では広い範囲にわたってオーロラが認められる場合があるとの三宅氏の説明に対して、出席した文献史学の研究者から、古文書に残るオーロラとおぼしき記述について、見解を求める場面もありました。
もう1件、当館の箱﨑真隆プロジェクト研究員から、日本で確立された2つの新しい年輪年代法の解説と最新の成果について発表してもらいました。三宅氏の「西暦775年の宇宙線飛来」の発見にもとづく新しい年代法「炭素14スパイクマッチング法」によって、中国/北朝鮮の国境にある白頭山が10世紀に起こした過去2000年間で世界最大の噴火の年代が、20年以上の論争を経て、ようやく1年単位での決定に至ったことなどを紹介してもらいました。また、当館が長年にわたって取り組んできた、炭素14年代法の高精度化に向けた研究の成果が世界標準データに組み込まれること、そしてその意義について説明してもらいました。
【プログラム】
13:00-13:45 報告1
箱﨑真隆(国立歴史民俗博物館研究部・プロジェクト研究員)
「2つの新しい年輪年代法の登場と歴史学・考古学・地球科学資料の高精度年代測定の現状」
13:45-14:30 報告2
三宅芙沙(名古屋大学宇宙地球環境研究所・准教授)
「樹木年輪の放射性炭素分析に基づく過去1万年間の太陽活動復元」
14:30-15:00 総合討論
15:00-15:15 挨拶・事務連絡など