2020年12月16日(水)に2020年度第1回異分野連携ユニット研究会を開催しました。今回の研究会では、山形大学中尾七重博士をゲストスピーカーとしてお招きし、当館坂本稔教授とともに炭素14年代法を用いた最新の研究成果について発表してもらいました。
はじめに、当館坂本教授から炭素14濃度を暦年代に変換する検量線「暦年較正曲線」の最新版「IntCal20(2020年8月公開)」について紹介してもらいました。IntCal20には、これまで歴博が蓄積してきた日本産樹木の年輪炭素14データが東アジアで初めて採用され、過去3000年間において大幅な修正が加えられました。データ蓄積の研究史や採用の経緯など、坂本教授から詳しい説明がなされました。
次に、中尾博士から、国指定重要文化財丸岡城天守と国指定重要文化財堀家住宅の年代測定結果について紹介してもらいました。これまで古建築の年代は外観の建築様式に基づいて推定されてきました。しかし、炭素14年代法や年輪年代法を建築部材に適用することにより、古いとされてきた様式が必ずしもそうではないことがわかってきました。中尾博士は、自然科学的年代法に基づいて従来の建築史観を見直していく必要があることを強く訴えられました。
以上の発表に加えて、当館の箱﨑真隆プロジェクト研究員から、2020年7月に倒壊した岐阜県瑞浪市大湫神明神社の御神木の年代分析について、途中経過ながら、調査の経緯や目的、今後の展望について発表がなされました。
【プログラム】
13:00-13:05 趣旨説明
箱﨑真隆(国立歴史民俗博物館研究部・プロジェクト研究員)
13:05-14:05 研究発表①
坂本稔(国立歴史民俗博物館研究部・教授)
「新段階に入った炭素14年代法」
14:05-15:05 研究発表②
中尾七重(山形大学理学部・客員研究員)
「古建築の炭素14年代研究」
15:05-15:35 研究発表③
箱﨑真隆(国立歴史民俗博物館研究部・プロジェクト研究員)
「岐阜県大湫神明神社御神木の年代学的調査」
15:35-16:00 総合討論