2020年度全体集会

 2021年3月7日(日)、総合資料学の全体集会を実施しました。2019年度は、新型コロナウイルス蔓延の影響で中止となりましたが、今年度も、オンラインでの開催となりました。当初は、可能な限りの感染対策を施した上で、沖縄県那覇市にて、一部対面のハイブリッド開催を予定しておりました。しかしながら、2021年3月の関東地域の緊急事態宣言延長により、ハイブリッド形式をやめ、全てオンラインでの開催となりました。
 集会は一昨年同様に、午前中にセンターの各ユニットの活動報告、午後に全国の大学等とともに研究を進める「奨励研究」および関連報告という形式で実施いたしました。

 2020年度は前半に研究会を行えない状況が続いたものの、オンライン等の環境整備により、後半においては、研究会を複数実施することができました。それらの状況を報告しまして、広く総合資料学の共同研究関係者の中で共有するとともに、さまざまな活動成果についても、理解を得る機会を作ることができました。

 奨励研究は、このコロナの状況の中でも、それぞれの研究代表者の方が、工夫を凝らして研究を推進していただき、多くの成果を得ることができた状況を、この全体集会でお話しいただきました。これは、館外のそれぞれの研究代表の先生方のお力によるものです。心より感謝申し上げます。また、最後に奨励研究の成果を展示としていただき、オンラインライブ中継の形式で、展示解説を実施いただいたのは、これからの研究成果の共有方法としても大変に興味深いものでした。そして、当初予定されていた会場である沖縄と東北地域をつなぐ展示ということも、地域資料や文化の継承を考える本プロジェクトにもマッチした、素晴らしいものであったと考えます。

 最後に、地域資料の継承とデジタルデータのあり方について、パネルディスカッションを行いました。地域歴史資料のデジタルデータ化において先進的な事例を進められている琉球大学、地域での歴史資料保全の実践を進める神戸大学の先生方をお招きする形で、さまざまな論点を出していただくことを狙いに進めました。本記事執筆者である司会の力不足もあり、まだまだ詰めきれない部分は多数ありましたが、資料に対する理解と、その来歴をどのように考えていくかなど、今後のさらなる活動につながる論点も出てきたと思います。

 2021年度の全体集会は、本事業終了の年度であるということもありますので、可能な限り、多くの人に集まってもらえるオンラインと、多様な議論ができる現地の両面をうまく使っていけるような集会を工夫したいと考えます。

【日時】2021年3月7日(日) 10:30-17:35 オンライン開催

10:30-開会
10:40-
令和2年度の活動報告
「2020年度の総合資料学プロジェクト」
  後藤真(国立歴史民俗博物館)
「歴史文化資料保全NWの取り組み」
  天野真志(国立歴史民俗博物館)
「科学研究費「 地域歴史資料学を機軸とした災害列島における地域存続のための地域歴史文化の創成」により作成しているkhirin Cについて」
  亀田尭宙(国立歴史民俗博物館)
「富山・石川地域における民具関連調査成果報告 地域民具資料の保存・継承に向けて」
  川邊咲子(国立歴史民俗博物館)
13:10-
奨励研究報告
「TEIを用いた『渋沢栄一伝記資料』テキストデータの再構築と活用」
  金甫榮(渋沢栄一記念財団)
「歴博奨励研究『活套』PJの成果と課題」
  須田牧子(東京大学史料編纂所)
「歴史災害記録のGISデータ形式での整備と公開・頒布システムの構築」
  大邑潤三(東京大学地震研究所)
「コロナアーカイブの資料学的検討と地域展開 ―アクションリサーチ編―」
  高橋そよ(琉球大学)
「戦後日本における記録映画の自主上映運動ネットワークの解明と地域社会でのデータ活用に向けた研究―小川プロダクション資料の領域横断的な高度利用を目指して―」
  相川陽一(長野大学),原山浩介(国立歴史民俗博物館),森脇孝広(都留文科大学)
15:00-
関連報告
「Linked Dataに基づく対話型Web 3D教材の開発フレームワーク」
  岡田義広(九州大学)
「産学官連携に基づいた地域資料継承支援事業について」
  堀井洋(合同会社AMANE)
15:50-
パネルディスカッション
「地域歴史資料データの蓄積・活用のあり方−デジタルによる開かれた歴史学の可能性」
  司会:後藤真,パネラー:冨田千夏(琉球大学),井上舞(神戸大学),橋本雄太,亀田尭宙
17:20-
奨励研究展示報告
「山形において近代に収集された歴史資料の研究と活用 -長井政太郎収集資料と林泉文庫-」    
  佐藤琴(山形大学)
17:35閉会