2021年7月1日(木)に2021年度第1回異分野連携ユニット研究会を開催しました。今回は、科研費基盤A「単年輪14C測定による較正曲線の地域効果・微細構造の解明(代表:坂本稔)」の最終年度成果報告会を兼ね、当館坂本教授および分担者3名より、4年間の成果について発表して頂きました。
はじめに、坂本教授から日本産および韓国産樹木の単年輪炭素14データの獲得状況と今後の展望について発表がなされました。歴博が蓄積してきたデータは、炭素14年代を暦年代に変換する検量線「暦年較正曲線」の最新版「IntCal20(2020年8月から全世界で利用開始)」に採用されましたが、科研費で得られたデータはこの次の暦年較正曲線に採用される可能性が高く、それに向けてクリアしなければならない課題についても議論がなされました。
次に、福島大学木村勝彦教授から、酸素同位体比年輪年代法の基盤を担う「標準年輪曲線」の構築状況について発表がなされました。酸素同位体比年輪年代法は、従来の年輪年代法では年代決定できなかった樹種や時代の木材に暦年代を与えることができ、単年輪炭素14データの獲得において重要な役割を果たしています。現時点で酸素同位体比の標準年輪曲線は5000年前まで延伸しており、これをさらに古い時代へと延ばすための最新の調査、分析状況について、木村教授から詳しい説明がなされました。
名古屋大学の三宅芙沙准教授からは、ご自身の科研費基盤S「過去1万年間の太陽活動(代表:三宅芙沙)」の計画と進捗状況を含め、日本および欧米の樹木から得た単年輪炭素14データを、太陽活動復元と暦年較正曲線の精度向上にどのように活かしていくかについて発表がなされました。
続いて山形大学の中尾七重博士から、今年度より始まった科研費基盤C「中世民家の年代研究(代表:中尾七重)」の計画を含め、これまでに得られてきた炭素14年代法と酸素同位体比年輪年代法による古建築の年代研究の成果について発表がなされました。 以上の発表後に、坂本教授から次の科研費の申請に向けた話題提供がなされ、分担・協力予定者から様々な提案が示されました。
【日時】2021年7月1日(木) 13:00-16:00
【会場】オンライン
【プログラム】
趣旨説明 | 箱﨑真隆(国立歴史民俗博物館) |
研究発表① | 「単年輪炭素14データ蓄積の現状と展望」 坂本稔(国立歴史民俗博物館) |
研究発表② | 「酸素同位体比年輪年代法の長期標準年輪曲線の構築」 木村勝彦(福島大学共生システム理工学類・教授) |
研究発表③ | 「過去1万年の太陽活動復元」 三宅芙沙(名古屋大学ISEE・准教授) |
研究発表④ | 「中世民家の年代研究」 中尾七重(山形大学理学部・客員研究員) |
話題提供 | 「基盤Sの申請に向けて」 坂本稔(国立歴史民俗博物館) |
総合討論 |