2021年度第3回異分野連携ユニット研究会「考古科学の新境地」を開催

2022年2月23日(水)に2021年度第3回異分野連携ユニット研究会「考古科学の新境地」を開催しました。今回は、科研費学術変革 (A)「土器を掘る:22世紀型考古資料学の構築と社会実装をめざした技術開発型研究(代表:小畑弘己)」と同基盤研究(S)「酸素同位体比年輪年代法の高精度化による日本列島の気候・生産・人口変動史の定量化(代表:中塚武)」の合同研究会を兼ねて、代表者2名および関係者4名より、研究計画と進捗状況について発表して頂きました。

はじめに、熊本大学小畑教授から学術変革 (A)「土器を掘る」の概要と現時点の成果について発表がなされました。多岐にわたる最新の分析技術によって、土器から得られる情報が劇的に増加し、従来の考古学では未解明だった先史時代の人々のなりわいが次々に明らかになっていること、本科研費によって、それを一層高い次元に導こうとしていることについて詳しく説明がなされました。

次に、「土器を掘る」計画研究代表者である中央大学小林謙一教授から、先史時代の高精度編年の現状と展望について発表がなされました。歴博が作成に関わった新しい暦年較正曲線「IntCal20」によって見直された最新の土器編年の状況について説明がなされました。続いて、「土器を掘る」公募研究代表者である歴博箱﨑真隆プロジェクト研究員から、炭素14年代法による誤差0年の年代決定の現状と展望について発表がなされました。日本の屋久杉から発見された西暦775年の炭素14急増イベントを皮切りに、全世界で様々な時代において、単年輪炭素14測定が進められており、見つかったイベントを誤差のない炭素14年代測定に応用する研究が進められていることについて説明がなされました。

休憩をはさみ、名古屋大学中塚教授から基盤研究(S)「酸素同位体比年輪年代法の高精度化」の概要と現時点の成果について発表がなされました。この2010年代に著しい発展をみせた酸素同位体比年輪年代法の原理や代表的な成果、歴史学・考古学で大きな注目をあびている2600年間に及ぶ精密な気候変動の復元について、詳しく説明がなされました。

次に、名古屋大学佐野雅規特任准教授(基盤研究(S)での雇用)から、年輪酸素同位体比によるアジアの気候復元と年代測定について発表がなされました。年輪の酸素同位体比データは、地球の広大な範囲の気候変動を明らかにできる優れた代替指標であることが示されました。続いて、「酸素同位体比年輪年代法の高精度化」の分担者である名古屋工業大学庄建治朗准教授から年層内分析に基づく気候復元の現状と展望について発表がなされました。気候復元の解像度を上げる注目の技術として、年層内分析の有効性や現時点の到達点が示されました。

以上の発表後に、両代表者から互いのプロジェクトに期待すること、今後の共同研究や、情報共有のあり方について討論がなされ、閉会しました。

【プログラム】

13:00-13:10箱崎真隆(国立歴史民俗博物館)
 趣旨説明
小畑弘己(熊本大学)
 「『土器を掘る』の概要と現時点の成果」
14:00-14:30小林謙一(中央大学)
 「先史時代の高精度編年の現状と展望」
14:30-15:00箱崎真隆(歴博)
 「炭素14年代法による誤差0年の年代決定の現状と展望」
15:05-15:55中塚武(名古屋大学)
 「『酸素同位体比年輪年代法の高精度化』の概要と現時点の成果」
15:55-16:20佐野雅規(名古屋大学)
 「年輪酸素同位体比によるアジアの気候復元と年代測定」
16:20-16:45庄建治朗(名古屋工業大学)
 「年層内分析に基づく気候復元の現状と展望」
16:45-17:00総合討論・事務連絡
討論のようす
箱﨑プロジェクト研究員の報告