人文科学とコンピュータシンポジウム2019 歴博共催セッション「若手研究者によるCH/人文情報学」を開催

2019年12月14日(土)から15日(日)にかけて立命館大学大阪いばらきキャンパスにて開催された「人文科学とコンピュータシンポジウム2019」(じんもんこん)の企画セッションとして、14日午後に歴博共催セッション「若手研究者によるCH/人文情報学」を開催しました。「総合資料学の創成」事業では毎年「じんもんこん」にて共催セッションを実施しており、今回で3回目の開催となります。

「総合資料学の創成」事業の中では、特に若手研究者の育成と広い支援を目指しており、2019度からは特に「未来世代の育成」を重点化しています。また、研究開始当初より多くの新たな研究と連携の可能性を支援するための「奨励研究」制度を実施しています。そこで本セッションでは、若手研究者による現在の研究の一端を紹介することとしました(ここで言う「若手」とは年齢のことではなく、博士号未取得あるいは博士号取得後8年以内の研究者のことを指します)。

今回のセッションに先立って人文情報学ユニットでは、2018年8月に若手の人文情報学研究者を集めた「DHシステム開発・データ構築合宿」を千葉県館山にて開催しました。今回の登壇者もこの合宿の参加者を中心にしています。当日のセッションでは、当館後藤による趣旨説明の後、4名の若手研究者が各15分の「ロング枠」報告をおこないました。その後、質疑応答に続いて、もう4名の研究者による各5分間のライトニングトークが実施されました。ロング枠発表では、2019年10月に当館に着任した亀田も報告をおこなっています。

当日は「じんもんこん」の参加者を中心に100名以上の参加者がありました。登壇者からはLinked Data, TEI, GIS, データ可視化、文字情報など多岐にわたるテーマについて報告がありました。今回の登壇者8名のうち2名は情報系出身ですが、6名は人文学研究から出発して人文情報学に取り組み始めた研究者です。人文系出身の研究者も実際に手を動かしてシステム構築やTEIマークアップに取り組んでおり、CH/DHの研究分野としての広がりを感じました。こうした人文学出身のCH/DH研究者の数は、今後も増えていくことが予想されます。

前述の合宿が千葉県で実施された関係上、今回のセッションの登壇者は関東圏の研究機関に所属する研究者や学生が中心となりましたが、質疑応答では関西圏の若手研究者からも合宿に参加を希望する声が挙がっていました。学問分野の境界をまたぐCH/DHはまだまだ日本国内ではニッチな研究領域であり、若手研究者の支援はさらに充実する余地があります。「総合資料学の創成」事業では、今回のセッション発表者2名を2019年度からRA等として雇用しており、今後も若手研究者の育成を支援していく予定です。

【日時】 2019年12月14日[土] 13:30-15:30

【会場】 立命館大学大阪いばらきキャンパス

【プログラム】
趣旨説明(国立歴史民俗博物館 後藤真)(15分)
研究発表(各15分)
 亀田尭宙(国立歴史民俗博物館)「Linked Data 地名辞書 における Reconciliation API の実装」
 小川潤(東京大学大学院)「ラテン碑文のTEIマークアップに基づくtext-image linking、およびグラフDBとの連携」
 小風尚樹(東京大学大学院)「財務記録史料のTEI化と度量衡の単位体系のオントロジー構築」
 吉賀夏子(佐賀大学)「低コストな文化財書誌の機械可読化を目指して」
質疑応答(20分)
ライトニングトーク(各5分)
 小風綾乃(お茶の水女子大学大学院)「18世紀フランス『百科全書』の典拠作成」
 渡邉要一郎(東京大学大学院)「パーリ文献の検索システムに関して」
 村田祐菜(東京大学大学院)「近代短歌テキストのTEIによる構造化と利活用」
王一凡(東京大学大学院)「 過去と未来の文字情報 」

後藤による趣旨説明
小川氏による報告