第25回情報知識学フォーラムでの報告


 2021年1月9日(土)に第25回情報知識学フォーラム「アフターコロナの学術研究分野におけるオープンサイエンスを考える」がオンライン開催されました。総合資料学から川邊プロジェクト研究員が参加し、招待講演の一つとして、昨年開催した新型コロナウイルス関連の二つのイベントについての報告を行いました。

 本フォーラムは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、これまでとは異なったかたちでの学術活動や人的交流、コミュニティ形成が求められる中で、そうした活動の難しさや課題、今後の見通しについて共有し議論を行うことを目的に開催されました。招待講演では、情報学、歴史文化研究、生物学、学会支援の立場から4名の講演者が報告を行い、最後にパネルディスカッションを実施しました。講演前半と後半の間にはポスターセッションが行われました。ポスターごとに設置された会場において、資料調査やデータ公開などの取り組みについて具体的な報告が行われ、活発な議論が展開されました。

 川邊研究員の講演では、2020年7月11日に「学術野営2020 in 奥州」内の単独セッションとして開催した「新型コロナウイルス流行後の社会における資料保存・活用について」と、同年8月に開催した「学術野営2020 in 奥州」関連イベント「新型コロナウイルスの感染が懸念される状況下での歴史・文化資料調査のためのガイドラインを考える」における議論の内容について総括しました。二つのイベントを通し確認されたのは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のために移動や人との接触が制限され、これまでのように地域資料の保存・活用のために現地に行って活動することができなくなったことが一番の問題であり、それを克服するために資料のデジタル化のニーズが今まで以上に高まったことがコロナ禍で見られた大きな変化であるということでした。そうした状況の中で歴史文化系の研究・教育活動や資料の保存・継承を行なっていくには、活動の内容や対象に見合った感染予防対策の方針・方法を人や機関とのコミュニケーションを通して確立していくこと、現物資料とデジタル資料、オンサイトとオンライン、それぞれの価値や可能性について整理すること、そして、そうした検討を重ね、多様な経験や考えを共有していくことが重要であると考えられます。今回の講演では、コロナ禍における歴史文化資料の保存・活用のための新しいスタイルの模索を通して得られたそうした気づきについて報告しました。

 4名の講演を受けて開かれたパネルディスカッションでは、それぞれの講演者に向けての質問に加え、現在のコロナ禍、そしてアフターコロナの時代において、学術研究は何を求められ、そのあり方はどのように変わっていくのかといった、今後の見通しについての意見交換が行われ、変化に対応していく難しさと可能性について議論されました。今後もコロナ禍の状態が続く中で、今回のように活発に情報や意見を交換し議論できる場を設けていくことが望まれます。