2017年7月22日(土)と23日(日)の2日間、異分野連携ユニットの第1回研究会が、歴博共同研究「『聆涛閣集古帖』の総合資料学的研究」の研究会との合同で行われました。
「聆涛閣集古帖」は、江戸時代後期から明治初年にかけて編纂された古物類聚の模写図録で、歴史学、考古学、美術史、民俗学、文化財科学など、さまざまな視点から研究を進めることができる可能性を秘めた資料です。総合資料学の研究対象としてふさわしい館蔵資料として昨年度より注目してきましたが、今年度より、公募型共同研究「『聆涛閣集古帖』の総合資料学的研究」(研究代表者・藤原重雄・東京大学史料編纂所准教授)を正式に開始することになり、今回はその合同研究会を実施することになりました。
日時:2017年7月22日(土)~23日(日)
場所:国立歴史民俗博物館
内容:
7月22日(土)13時~17時(大会議室・第一調査室)
大会議室に集合した後、第一調査室において、聆涛閣集古帖ならびに関連する館蔵資料の熟覧を行いました。
7月23日(日)9時30分~17時(大会議室)
研究会
9:30~11:00 一戸渉(慶應義塾大学斯道文庫)「近世好古図譜研究の諸前提」
11:15~12:45 佐藤洋一(福島県立博物館)「『集古十種』版本の流布について」
14:00~15:00 後藤真(歴博)「聆涛閣集古帖のデジタルデータ化と閲覧システム―IIIFの活用―」
15:00~17:00 今後の調査研究の方法についての意見交換(「『聆涛閣集古帖』の総合資料学的研究」メンバーのみ)
1日目22日の資料熟覧では、集古帖の実物資料やその関連資料の観察、さらには彩色の分析を通じて、集古帖がどのような素材をもとに、どのような段階を経て編集がなされていったといった点について、さまざまな情報を引き出すことができる可能性があることを確認しました。熟覧後は有益な意見交換が行われ、今後さらなる実物資料の分析を行う必要を痛感しました。
2日目23日の研究会では、まず一戸、佐藤両氏から、藤貞幹『集古図』や松平定信『集古十種』など、近世の好古図譜の系譜やその流布について、詳細な研究発表がおこなわれました。これらはいずれも、『聆涛閣集古帖』の資料的意義の前提となる内容で、近世の思想史・文化史的な流れについて、分野の異なる共同研究員の間で、基礎的な理解を共有することができました。今後はこうした近世の思想史・文化史的な状況への理解をふまえた上で、『聆涛閣集古帖』の個別的な検討に入っていくことになります。
また、後藤副センター長からは、人文情報学の立場から、異なる資料の比較をWeb上で可能にするIIIF(トリプル・アイ・エフ)や、メタデータの記述モデルであるRDFなどを駆使することによる、『聆涛閣集古帖』の研究成果公開の可能性の広がりについての発表がおこなわれました。『聆涛閣集古帖』は、同時期のさまざまな好古図譜との比較や、描かれたモノと現物資料との比較、といったさまざまなレベルでの比較が可能な資料であり、資料のもつ多様な情報を最大限に引き出すためにも、デジタルネットワークを構築する必要性があることが確認されました。