2021年10月20日(水)、2021年度第1回人文情報ユニット研究会を、南城市役所会場とオンラインのハイブリッド形式で開催いたしました。
地域におけるデジタルアーカイブの公開は、政策による推進ともあいまって、昨今大きく進みつつあります。
また、アーカイブのオープン化という大きな流れの中で、アーカイブの再活用・利用といった文脈もクローズアップされ、いかに多くの人にアクセス可能になるかという状況の検討も進んでいます。「総合資料学の創成」事業においても、実際に自治体のデータを入れていく例が増えつつあり、これらの資源を具体的に活用するための方法も、様々な形で求められつつある状況になりつつあります。これは、教育や、データ解析、地域の人々に関する資料理解などが具体的な例としてあげられるでしょう。
そこで、本研究会では、構築された地域のデジタルアーカイブをもとに、上記のような大きな流れに対応する活動を進めている事例を報告していただき、そこから地域におけるデジタル展開の可能性について検討を行いました。
新垣氏からは、なんじょうデジタルアーカイブの詳細について、ご説明をいただきました。構築の経緯から、データの運用、データ公開の状況、関連するイベント等についても説明をいただくとともに、ジャパンサーチとの連携や、他地域間の連携についても言及がありました。新垣氏からの重要な論点としては、さまざまな高度なアプリケーションより先に、基本的なデータの蓄積を行うことから始められたことや、地域における活動の流れの中にもデジタルアーカイブが位置付けられているということがありました。地域のデジタルアーカイブを進めていくためには、目立つフローに乗せるだけではなく、基本的なストックを蓄積していくことが重要であることを、改めて示していただいたことは大きな意義があったと考えます。また、本事例はジャパンサーチや他地域との連携を積極的に推進し、地域に密着したデジタルアーカイブと、外部から地域をみてもらうためのものの両面を推進することにも成功した、非常に良い事例でした。
吉賀氏からは、佐賀大学と県立図書館のデジタルアーカイブ公開という大学と地域図書館連携について、発表をいただきました。大学と連携することにより、技術的に高度な手法や、最新の考え方をデジタルアーカイブに取り入れることが可能となっている例が、とりわけ重要な論点として挙げられます。地域のデジタルアーカイブ構築に際して、それぞれの自治体担当者に情報があっても、実践することが困難な場合もありますが、そのような状況に際しては、大学などと連携することで、先進事例を実験的に取り入れることができるなどの動きも可能となるため、デジタルアーカイブの高度化が可能となるという事例のご報告でした。
後藤からは、現在のデジタルアーカイブの政策的な動向について説明しました。2020年にジャパンサーチが正式公開されました。その後、公開当時より地域のデジタルアーカイブとの連携が増え、収録されているデータベース件数が大幅に増加し、多様性が増えてきています。と、同時に、デジタルアーカイブの今後の施策や方向性についても、「デジタルアーカイブを日常に」というフレーズのもと、さらなる展開を行えるような議論を行いつつあり、その状況について報告しました。 これらの地域デジタルアーカイブは、長期に維持されることで、地域文化の理解を促し、地域社会の理解を深めるためのインフラとして重要な機能を持ちうるものです。災害時における資料レスキューや、記憶の拠り所にもなりうるとともに、地域の文化理解から、人口減少の際の「精神的な歯止め」となる機能も期待できるでしょう。今後、khirinなどのデータベースは、これらのデジタルアーカイブとの連携もさらに強化していく必要があると考えます。
【日時】2021年10月20日(水) 13:00~17:00
【会場】南城市役所及びオンライン(Zoom)
当日の報告内容は下記の通りです。
報告1 | 新垣瑛士(南城市教育委員会) 「南城市におけるデジタルアーカイブについて」 |
報告2 | 吉賀夏子(佐賀大学) 「佐賀におけるデジタルアーカイブの可能性」 |
報告2 | 後藤真(国立歴史民俗博物館) 「デジタルアーカイブの国の動向と今後」 |