2019年度初頭に、新たに2件のデータベースを公開しました。一つは、鳴門教育大学附属図書館が所蔵する「後藤家文書」で、もう一つは当館所蔵の「館蔵錦絵」の一部です。いずれもkhirinの中で、目録をRDF形式で公開し、IIIFでの閲覧を可能としています。
「後藤家文書」は旧阿波国名東郡早渕村(現徳島市国府町早渕)、19世紀中に組頭庄屋を勤めた旧家である後藤家に伝わった文書群です。
後藤家文書については、千葉大学附属図書館所蔵「町野家文書」と同様に、鳴門教育大学附属図書館でのサイトで一覧を公開し、khirinでは検索による情報発見を可能にしています。ただし、「町野家文書」の事例と異なるのは、ビューアは歴博のものを使用していること、また、独自の「後藤家文書だけを検索できる」検索窓を鳴門教育大学附属図書館のサイトに置いた点です。
「館蔵錦絵」は国立歴史民俗博物館が所蔵する錦絵のデータベースです。江戸時代後期から明治時代にかけて制作された錦絵は、描かれた当時の風俗や世相、あるいは都市景観などを映し出しており、近年、美術史だけではなく、歴史学、民俗学、風俗史、文学史、演劇史など多方面の研究に有効な資料として注目されてきました。錦絵の歴史・民俗資料としての有用性に着目してきた当館は、主として歴史学、民俗学研究のための画像資料としての観点から、創設以来積極的に収集を進めてきました。中核となる「錦絵コレクション」約3,400点を含め、現在約4,000点の収蔵を数えるにいたり、今なお収集は継続されています。
このデータベースとして、当館では「館蔵錦絵」データベースを公開してきました。この館蔵の錦絵に画像、および詳細な書誌データを付したもので、「錦絵コレクション」を皮切りに、順次公開を進め、ひろく諸分野の研究に貢献しています。
khirinバージョンは、このデータベースの中から高精細画像をIIIFで提供したものです。画像にはカラーチャートをつけるだけではなく、特に版元や摺師などの情報、主題などの情報を日英両言語で展開したことで、より研究的な要素の強い、絵画のデータ公開として位置付けられています。
これらのデータベースはいずれも、公開時点ではCC BY4.0国際準拠として公開されています。そのため、他のkhirinのデータとともに、自由に再利用が可能となっています。館蔵錦絵に関しては、ジャパンサーチや他のデータベースでも公開されている錦絵との相互運用が期待され、新たなデータの展開ができると思われます。また、後藤家文書は近世後半の文書史料としては極めて多くの情報が含まれるとともに、目録では地名情報等も豊富に含まれるため、新たな研究を展開することも可能でしょう。
今回のデータ追加により、千葉大学附属図書館所蔵「町野家文書」とあわせ、近世後半の史料が複数khirinに追加されることとなりました。同年代の資料をリンクで確かめたり、それらのリンクの結果をIIIFのビューアで比較分析するなどのデジタル独自の分析の可能性が広がりつつあります。
「後藤家文書」のように、当館との相互運用による画像公開の手法については、大元の大学側の負担が比較的軽い点が特徴です。目録と画像が整備されていれば、当館の運用モデルの中で相互に成果公開が可能となります。
今後も、このような形で資料公開のネットワークを展開できれば幸いです。