ITWG研究集会とLODLAM Summit 2020に参加

 2020年2月6日(木)・7日(金)、米国ロサンゼルスはGetty Centerにて行われたITWG(International Terminology Working Group)の研究集会に参加し、統制語彙の翻訳に関する報告を行いました。また、これに合わせて、同じくGetty Centerにおいて2月3日(月)・4日(火)にかけて開催されたLODLAM(Linked Open Data – Libraries, Archives, Museums)サミット2020にも参加しました。同二つのイベントには、総合資料学から川邊プロジェクト研究員と、同じく歴博の亀田尭宙特任助教が参加しました。

 LODLAMサミットは2~3年毎に行われているLinked Open Data(LOD)の国際学会です。今回も例年通り、参加者がその場で議題を提案して議論を行うアンカンファレンス方式で実施されました。会期中の両日とも、最初に提案された議題を基にディスカッションの場がパラレルに組まれ、参加者はそれぞれ興味のある議題の場へと分かれて議論を行いました。議題はLOD関連の内容に限られるものの、技術的な話題から具体的なワークフローの話題、さらにユーザー・インターフェースやアプリケーションの実用性と今後の展開について、LODのデータ更新のためのコミュニケーションについて、多文化・多言語から生じるデータ統合の困難性について、LODの教育やトレーニングについて、データ集約システムの新設に向けた課題についてなど多岐にわたり、参加者は自由に意見を交換し合いました。

 また、事前にエントリーされたLODに関するプロジェクトのアピール動画に参加者全員が投票し優勝者が選ばれるという恒例イベントLODLAM Technical Challengeも会期中に行われました。そのため、総合資料学からも”khirin”についての動画を作成、エントリーし、当日は他の7組のチャレンジャーたちとともにショート・プレゼンテーションを行い投票に臨みました。結果、優勝を勝ち取ることはできませんでしたが、総合資料学と”khirin”について国際的な注目を得てさらに議論を深める良い機会となりました。

 ITWGの研究集会では、Getty Vocabulary プログラムによる統制語彙AAT(Art & Architecture Thesaurus)の日本語翻訳について報告を行いました。総合資料学では、”khirin”で使用する語彙の統制化と国際化を目指し、AATの日本語訳を試験的に開始しています。その中で出てきた疑問点や課題などを今回の研究集会で共有し、AATの翻訳とその活用を組織的に進めている中国語やドイツ語などのプロジェクトの報告から先駆事例についての情報を得ました。また、Getty側から疑問点についての回答をもらい、他国の参加者からも多くの気づきやアドバイスを得ることができました。その他、OpenRefineを用いた AATの活用方法などデータ処理の実用的な話題も扱われつつ、フランス語やポルトガル語など複数の国・地域で使用されている言語のバリエーションの問題や、語彙の階層構造の文化間での違いなど、国際的な語彙の統制を目指す上での具体的な課題が明らかになりました。

 今後もAATをはじめとしたGetty Vocabularyの翻訳や新しい語彙の提供を進めていくため、今回集まったメンバーを中心に継続的に議論を行っていく予定です。こうした取り組みが国内外にある日本の歴史文化資料や他国の歴史文化資料を関連付け、俯瞰的に見る環境の構築につながることが期待されます。

LODLAM Challengeのスピーチの様子
会場となったGetty Center
(写真は美術館の建物)