2022年1月8日(土)、2021年度第1回地域連携・教育ユニット研究会を開催しました。
資料保存の取り組みが各地で進展するなか、地域に伝えられた多様な資料を継承する技術の活用が課題となっています。特に近年では、災害など資料の存続に危機的な状況が発生した際の対応が各所で議論・実践され、被災現場での対応を担う担当者やボランティアが推進する活動が注目されています。その過程で資料の取り扱いや処置方法をめぐる技術的な課題をいかに対応するかが議論されており、地域における資料保存の担い手が安全かつ効果的に活動するための連携が求められています。
そこで本研究会では、「地域と専門家とをつなぐ」をテーマとし、地域における資料保存にとって専門的な技術や考え方が果たす役割について検討し、各地で進められる取り組みをとおして今後の展望を探っていきました。
研究会では、天野報告で資料保存の現場で展開するコミュニケーションのあり方を考え、ワークショップなどをおこなう上での課題と展望が紹介されました。また、中尾報告は、文化財保存科学という立場で実践する福島での取り組みを紹介し、地域で活動するための具体的な方法が示されました。第3報告は、長野市立博物館を拠点に活動する被災資料救済の実践が紹介され、博物館学芸員とボランティアとが協働して取り組む活動に各方面の専門家が関わっていくことの意味が伝えられました。
3報告を踏まえて討論をおこない、地域を主体として資料保存を実践するうえでの課題やそれらに対応するための考え方が議論され、今後の持続的な地域連携とさらなる広がりに関する展望が語られました。
なお、本研究会は、総合資料学と特別推進研究「地域歴史資料学を機軸とした災害列島における地域存続のための地域歴史文化の創成」(代表:奥村弘)との共同主催、科学研究費基盤研究A「恒久的保存に向けた災害被災資料の特性解明と保存環境の構築」(代表:松井敏也)の共催として開催されました。
【日時】2022年1月8日(土) 14:00~17:00
【会場】オンライン(Zoomを利用)
【プログラム】
会挨拶 | 奥村弘(神戸大学) |
趣旨説明 | 天野真志(国立歴史民俗博物館) |
報告1 | 天野真志 「資料保存の実務をめぐるコミュニケーション」 |
報告2 | 中尾真梨子(福島文化財センター白河館) 「福島県における文化財保存科学の役割」 |
報告3 | 栗田昇・鈴木映梨香・三井百合子・森多毅夫(ながはくパートナー文化財保存グループ)、原田和彦(長野市立博物館)、山中さゆり(真田宝物館) 「ボランティアと専門家との対話」 |
討論 | 司会:河野未央(尼崎市立歴史博物館) |