2021年度第2回地域連携・教育ユニット研究会を開催

 2022年3月6日(日)、第2回地域連携・教育ユニットを開催しました。

 本研究会は奨励研究「人口減少にともなう地域資料喪失の危機に対応した活動モデルの検討 ――宮崎県を検討対象として」にて企画されたディスカッション『空き家の文化財を考える-保全からデジタルアーカイブまで-』(地域歴史資料の滅失を考える研究集会)として開催され、本ユニットの研究会としても位置づけています。

 人口減少や少子高齢化といった日本社会を覆う重大な課題は、地域コミュニティが歴史の中で蓄積してきた多様な文化を将来にわたって保持していく事を困難にしており、その影響で近年では「空き家」がいちじるしく増加しています。空き家状態の建物は、維持・管理に多くの課題を抱えていますが、建物自体に歴史的な価値がある場合はもちろん、室内に放置された様々な文化財がのこされている事例が多く確認されます。そのため、これらを地域社会の資源として保存・活用していく必要性は極めて高いですが、地域のなかでどのように空き家状態の建物を把握し、それらを継承していくかが問われています。そこで本研究会では、宮崎県北部地域の状況を事例として、空き家と文化財の問題を検討しました。「保全からデジタルアーカイブまで」をテーマとして掲げられた研究会では、空き家となった建物からレスキューされた資料の検討をも踏まえつつ、「空き家と文化財」に関わる諸課題について議論をおこないました。

 ディスカッションでは、建物内に残されていた多様な資料を把握する考え方や具体的な整理など、多様な論点が提示されました。特に、建物や資料に自治体・諸団体がどのように関与することができるのか、権利処理・活用の面から問題提起が行われました。地域資料の保存・継承に関しては、近年資料ネットやヘリテージマネージャーなどが活発な活動を展開していますが、こうした団体が空き家となった建物や内部に存在する諸資料に対してどのような対応がとれるのか、財産として資料を取り扱う課題が議論されました。なお、本研究会でテーマとした「資料保全からデジタルアーカイブまで」を推進するために、研究会翌日にディスカッション参加者を中心にワークショップを開催し、資料保存に関する一連の経過をシミュレーションによって理解する作業を行いました。

 地域存続に向けた取り組みに対し、空き家問題は全国的な課題となっています。そうした問題について、本研究会では宮崎県の事例をもとに資料保存の観点から検討しました。今後も様々な角度から地域の歴史文化継承に向けた課題を検討していきます。

【日時】2022年3月6日(日) 14:30-16:30
【会場】オンライン
【主催】九州保健福祉大学博物館学研究室・国立歴史民俗博物館「総合資料学の創成」事業
【協力】門川町教育委員会

【ディスカッション内容】
 1: 空き家と文化財問題の現状と課題
 3: 自治体・民間ボランティアによる関与と権利処理・活用の課題 。
   ⇒宮崎県門川町での事例、宮崎県内の事例について、経緯経過を説明。
 2: 空き家における多様な資料の存在と保存
 3: 自治体・民間ボランティアによる関与と権利処理・活用の課題 。
   ⇒多様な資料の存在と保存状態。収蔵をめぐる諸課題。
 3: 自治体・民間ボランティアによる関与と権利処理・活用の課題 。
  ⇒自治体による財産権関与への問題、資料ネットやヘリテージマネージャーといった民間による関与の問題。
   さらには諸権利をどうするか。地方自治体による活用を目指した場合での様々な課題について。
【ディスカッション参加者】
・天野真志・亀田尭宙・川邉咲子・後藤真・橋本雄太(国立歴史民俗博物館)、
 甲斐由香里(三重県総合博物館)、佐藤宏之(鹿児島大学)、渡邉一弘(宮崎民俗学会)
・コーディネーター:山内利秋(九州保健福祉大学)ほか

ディスカッションのようす①

ディスカッションのようす②
ワークショップのようす